日本の映画音楽、ジブリアニメに欠かせない久石譲。僕は「joe hisaishi meets kitano films」「Dolls」「HANA-BI」のサウンドトラック3枚持っています。途切れることなく名曲を生み出す「天才」だが、いったいどんな発想をしているのか。久石譲の「感動をつくれますか?」という本には、その考えが惜しみなく書いてあった。
極限のルーティンワーク
2004年公開「ハウルの動く城」では小淵沢スタジオで合宿し、フルオーケストラの曲を10日間で11曲作曲したとのこと。
朝九時四十五分、携帯の目覚ましで起床
十時から約一時間、周辺の山々を散歩。
シャワーを浴びて、十二時過ぎにスタジオジブリに入る。
夕方六時まで曲づくりに没頭
…ベッドに入って本を読みながら就寝。午前三時半か四時ごろ眠りにつく。『感動をつくれますか?』/ 久石譲 (P24~25)
次の日の生活リズムを崩さないために、作曲時間もきっちり守っていたという。そのような環境に身を置くことは難しいが、仮にその環境にいてもルーティンの継続はそう簡単には出来ない。トップアスリートのようなマインドで音楽制作を行っている。
気分の波に流されてはいけない
ブランクもなく速いスピード作り続けることは、クリエイターにとってもっとも難しいことです。実際にアマチュアでも時間があれば、それなりの曲は出来ると久石さん自身も語っている。作曲の取り組みに対して、目からのウロコの記述がありました。
コンスタントにあるレベル以上の曲をたくさんつくりつづけていくためには、その時々の自分の気持ちに依存しないことだと僕は考えている。…確実にたくさんの曲を作りつづけていくには、気分の波に流されてはいけない
『感動をつくれますか?』/ 久石譲 (P22~23)
「良いライブを見て感動した」「良い演奏ができて興奮している」よし、この勢いで曲を作ろう。つまりそれではダメだということ。その原動力がないと曲がつくれないようでは、コンスタントに曲は作れない。むしろそれを原動力にしている人も多いと思うのですが、プロとしてやっていくための金言ですね。
耳が痛いですが、これは自分への戒めでもあります笑。
考えて、考えて、自分を極限までおいつめて
最近では、結局はひたすら考えるしかないという心境になっている。考えて、考えて、自分を極限までおいつめていくしかないのではないか
『感動をつくれますか?』/ 久石譲 (P40)
ものをつくる人間に必要なのは、自分の作品に対してのこだわり、独善に陥らないバランス感覚、そしてタフな精神力、この3つだと思っている
『感動をつくれますか?』/ 久石譲 (P101)
「久石譲も悩むのか」と一瞬嬉しくなったが笑、おそらく我々が想像する何倍も悩んでいる。対クライアントでありながら、同時に自分の音楽にこだわりを持たないといけない。そのはざまで名曲を生み出すのはさすがである。
僕も制作を始めると1日中悩んでいるので、やっぱりそうだよなと安心しました。悩めば迷宮に入りこむことも多いですが、悩まないと答えが出てこないんですよね。
まとめ
本書では精神論がメインで書かれており、妥協なき作曲の取り組みが語られていました。結局のところ「名曲」に「努力」ありですね。ただしあの大好きなメロディを生みだした秘密は書いていません。人間の琴線の触れ方を知りつくしていると思っていますが笑、それはマネできない久石譲の感性。
いろいろな感じ方をしてもらうには、つくり手側の感情をもろにぶつけないことだ。押し付けがましい音楽は、聴く人のイメージを限定してしまい、それ以上の感情を引き出すことができない。
『感動をつくれますか?』/ 久石譲 (P83)
昔は北野映画でタッグを組んでいたのですが、「Dolls」を最後に担当していません。ある記事で見かけたんですが「音楽が映画のイメージを超えてしまう」という理由だったとか。作曲者冥利に尽きますが、悩ましいところですね。実際「Dolls」は芸術性が高く、少ない音数から放つ1音1音の希望、絶望の世界観は見事です。
→北野映画!久石譲の音楽を使わなくなった理由
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